jun=privacy&SecretなしのOpen House

過去、現在、未来。色々なjun君の全て…。

怖い怖い赤いバッグの女性…

20歳の時に働いていた愛田観光株式会社(愛田社長グループ系列店)ホストCLUB…。

大分昔の昔話だ…。

同じ愛田観光系列の愛本ホストCLUBがギラギラと目の前にあった。僕はいつものラーメン屋でチャーハンを食べ終えて出勤しようとしていたんだ。

白いデカイベンツが愛本店にドカンと変な感じに停めてあって周りがザワザワしていた。真っ黒なスーツ、オールバックの40代くらいの893が騒いでた。

「俺の女をたぶらかしやがってこのヤロー!」ってチャカ(ピストル)を出した…。その向こうには真っ白なスーツのホストと仲良く腕をくんでいるケバい気の強そうな女性が立っていたよ。僕は遅刻確定を意識しながら足を止めて汚いゴミが山積みされている所でゴミの形に見える様にしゃがんで、やべぇ。と思いながら見てた。

「全部ワシの金でお前の所で飲んでんだよ!」って893が暴言を吐いた後…、

ドキュン!」って音がして真っ白のスーツが赤く染まり倒れた。893は女性を車に無理矢理連れ込み消えて行った…。周りはキャーキャー、店の幹部がドタバタ出て来て撃たれた従業員を店に入れず3人掛かりで何処かへ連れて行った…。やべぇものを見ちまった…。僕はとにかくゴミの形をいつまでもしている訳にはいかないし、出勤しようとした時、バサッって僕の手を後ろから掴む人が居てビックリしてJUMPみたいになりながら振り向いた…。赤いバッグを持ったヒールの高い靴を履いてケバい女性が僕の手を掴んでいた…。

「な、何!?どうしたの?」

「あんた今の見た?」って赤いバッグが言った。

「見たよ見たけど何?」

「No.1ってのはね、死ぬ気でヤんないと成り上がれないんだよ。」って言った。

「あ、あぁ…。分かったから手、もういいかな。」て僕は手を振り払った。

「あんたはこの店で働いてるの?」て聞いて僕は向かい側の4階だよと言ったら赤いバッグは街並みに消えて行った…。良く分からないけどあんなシーンを見た後にお店に誘う営業も出来ず、赤く染まったスーツと赤いバッグ…。僕は恐怖が2回あった様な感じでとにかく足早に店に入った。

店に入りタイムカードを押して、内勤のレジのオバちゃんに「千斗世(ちとせ)君顔色が悪いわね。歌舞伎町は色々あるのよ。良くある事なのよ。なるべく何事もなかった様に接客するのよっ。」と。僕は声が出なかったから2回笑顔でうなずいて頭の中を整理する間もなくヘルプの仕事に入って行った。心の中ではただただ恐怖でしかなかったよ。893もその女も、撃たれた血まみれのホストの従業員、それを何処かへ連れて行く幹部3人、赤いバッグの女性、争いや揉め事に動じないレジのオバちゃんの余裕な態度…。

恐ろしい恐ろしい…。何で僕も笑顔でうなずけたのか考えながらヘルプの席で灰皿を取り替えたりグラスに氷を入れたり先輩とお客さんのキューピッド役をしながら分かった…。今を生きる為に僕は無理矢理笑顔でうなずいたんだと。そして今もヘルプの席で笑顔満開で感情を押し殺しながら生きる為に笑ってジョークを言ったりしながらカラオケで「ヨイショッ!ハイハイッ!」て手拍子して盛り上げていた…。でももうマジ限界…。この仕事なんやねん… 。皆、田舎から大きな夢を持って入ってくる従業員。今は絶望的な勘違いと戦ってる…。

そう思っているのは僕だけ…?

整理整理、ポジティブに…、僕はきっと大丈夫だ!自信を持て!そういう思いを曖昧に整理をする事にした。

 

「千斗世君、新規のお客様が貴方を指名したいって。早く案内とエスコートしてあげて!」と冷酷なレジのオバちゃん。同期にお願いをして席のセッティングをしてもらい、名刺を用意してテーブルへ向かった。

さっきの赤いバッグの女性だった!

「あれ。さっきの人ですよね。帰ったのかと思ったよ。これ名刺、千斗世です。ご指名ありがとうございます。何を飲まれますか?」と冷静に穏やかに仕事をした。

「そうね。コルトンブルー水割りで。ボトルいくら?」

「80,000円です。水割りの水(ピッチャー)は小瓶2本セットでで2 ,000円です。」コルトンブルーは僕も大好きなウイスキーで好きだったから嬉しかった。

「じゃそれでいいわ。」

「ありがとうございます。」僕のヘルプに着いた後輩にそれらを用意する様に指示をして伝票を描き間違えない様に念押し、ソワソワしながらその女性の仕草や、煙草の銘柄、目線、ファッションセンスを観察しながら何を話するか考えながら灰皿を差し出し、赤いバッグから煙草を出し吸うタイミングで僕はデュポンのライターで火を付けたりしていた。

「今日はあのままお帰りになられたのかと…」

「バカね。私の事を知らないのね。」と笑った…。

知らないし…。虚言癖の女性も多いいから惑わされない様に流して話を聞く事にした。

「あんた。いや、千斗世君さ、一体何になりたいの?」

「僕は何になりたいかの答えですが、同じセクシャルと働いて、どうやって皆生きて行きたいのか、どうすればこのセクシャルで楽しく生きて行けるかを知りたくて入ったよ。だから何になりたいのかの答えはまた分からない。分かってたらここで働いていないよ。笑」

赤いバッグは周りの他のセクシャル達を見渡した。

「ふぅーん」って暫く皆の仕事振りを観察しながらコルトンブルーをゆっくり飲み続けていた。

「まぁ今日見た現場。あんなのでビビってたらこの街ではヤって行けないから、今日はとにかく飲みなよ。千斗世君。良い名前だね。千斗世君のヘルプもとにかく飲みなよ。」と、ヘルプを気遣える女性ではあった。

「ありがとうございます。このウィスキー大好きななんでマジで嬉しいっス!頂きまーす!」とヘルプも飲んで笑顔で答えた。だがしかし、本当はそいつはウィスキーが大嫌いな後輩だった。まぁ、そんな世界…。

赤いバッグの女性は名前も住所も電話番号も教えてくれず、閉店まで飲んで258,000円を支払いしタクシーで帰って行った。僕もタイムカードを忘れずに押すのが精一杯だけどちゃんと押してエレベーターのボタンを連打し1階へ降り、タクシーでマンションへ帰った…。

あぁ…、いつまでもつかな僕…。

あまり考えない様にしながら毎日とにかく出勤した…。

次の日。また赤いバッグが来た…。

「また入らして下さったんですね。嬉しいです。こちらへどうぞ。」ほぅほぅ…連続かぁ。

「千斗世君?」

「はい。なんでしょーか?」

「あんたホスト本気でヤってる?」

「いや~、No.1になると殺されそうでー笑」

 

「あんなので驚いてたら真面目に地味な仕事に切り替えて平々凡々な暮らしに変えてシッポリした田舎にでも行きなよ。何処にだって揉め事なんてあるんだよ。皆お金で大体揉めんだよ。」ってコルトンブルーのボトルがもうなくなりそうな位まで飲んで、目が虚ろになりながら話を続けた。

「言ってる事は凄ーく分かるよ。分かり過ぎる位分かってるよ。僕も出来高制でお金が欲しいからこの仕事を選んだんだ。」

「お金って、一周回って散々使ってみると余り興味なくなるのよね。私があんたを一周回らしてあげても良いけどどうする?」何だか別にどうでめ良くなってしまって来た僕は、

「一周回ってみたいもんだね。」とそんな話を信じていないから投げやりに笑いながら答えた。

コルトンブルーが全て空になり、新しいボトルを進めるのが本当のホストかも知れないが、あえて進めるのをヤメた。赤いバッグの女性のお会計を済ませタクシーを止めた。

「今日もわざわざ本当にありがとう。またいつでも気軽に来て下さい。おやすみ~!」と笑顔で見送った。

どうせ虚言癖だしもう来ないと思ったから…。

数日、数週間赤いバッグはやはり来なかった。

期待は絶望の始まり…。

早めに次の仕事を何にして目標を目指すかを優先に考える様にもなっていた。

僕も自分のマンションに帰り、ポストの中のチラシを全て捨てながら眩しい朝の光の中、遮光カーテンをバシャッと閉めてシャワーを浴びながら、一周回ってみてーもんだよな…って笑いながら眠りについた…。

 

何?何何?赤いバッグがチラチラ見える…。

あぁー怖い。ストーカーっぽく赤いバッグが2週間後くらいに店の前で僕の出勤を待ち伏せしていた。

「お。久しぶりだね、待ち伏せなんてしなくても…笑。」

「私の事怖い?大丈夫よ。あんた一周回ってみる?回った方が良いよ。こんな店いくらでも出戻り出来るんだからさ。おいで!」って僕をタクシーに無理矢理乗せ、たどり着いた場所はあまり地名が分からないがセキュリティーの頑丈な低層高級マンションだった。オートロックの解除を4回もしないと部屋に入れない。

「入って。千斗世。この部屋あげるわ。自由に使って。私勝手に入って来ないから安心して。はい!鍵。」って中を案内し始めた。1番奥のベッドルームにデカイ金庫が2つあった。

「これは右が千斗世のね。左は私の金庫ね。」と右の金庫の扉を開けた。中には現金が数えきれない程ギッシリ入ってた…。怖い怖い…。何何…。ヤバイんじゃね…。

「あ、あぁ。どうしてこんな事を…?僕に?大体君の名前も知らないしし…、君が何をしている人かも分からないし…。僕をどうしたいの…?」

赤いバッグ笑った…。

「良いから一周回ってみなよ。私は何周も回ってもう飽きたの。お金って少しだけしかなくても何だかんだ幸せになれるんだよ。」やべぇ…、僕をお金に飽きさせて一緒になろうと言っている様にしか聞こえない。こんなマンションはいらないし、目の前のお金も、何周回ってるのか分からない赤いバッグのパートナーにはなりたくない…。マジでやべぇ…。冷静になれ自分…。札束は誘惑だ!早く上手く切り上げて脱出しないといけない感じがした…。

「いやいや~、僕は今の自分のマンションの自宅や仕事と仲間が好きなんだー。だからこのお金やマンションは僕はいらないよ。笑」と言った後、赤いバッグが赤いバッグを開け太いカッターナイフを取り出し、僕の左手に切りつけた。

「どうして私の気持ちを分かってくれないの!」発狂した赤いバッグの女性が大きな声を出して泣いてうずくまった…。僕は深い傷から止まらない血を流したまま、

「ごめんね…。君の期待に答えられなくて…。」と言って部屋を出た。迷路みたいなマンションから要約ロビーの様な場所までたどり着きトイレで応急処置をして急いでタクシーで店に戻った…。

あぁ、超こぇー。もう何なんだよ。本当に危ない事しかねーし。と、安心した気持ちになったけれど、ふと思った…。店に居たら赤いバッグがまた来るんじゃね…?

「オバちゃん、今日早退するよ。僕は血が止まらないし。マジ帰るよ。」

「あら。わかったわ。明日は来るの?」

明日の事?考えられないけど…、

「血が止まったら来るよ。じゃ。」

「はーい。」と血も涙もないオバちゃん…。

 

僕は赤いバッグがそれ以来怖くて怖くてトラウマになったんだよ。赤は情熱的みたいだけど、片寄った行き過ぎた身勝手な情熱は1ミリも美しくない…。

お店も辞めた。もう傷付きたくないし汚れたくない。

見たくないもの。聞きたくない話、知らないで良い事も幸せの1つだと知った。

今は本当に幸せだから、赤いバッグに半分感謝!